天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)



天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)
天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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読みやすいが論考には疑問も

こういう話を読む時に一番の難点は、登場人物同士の血縁関係がわかりにくい(覚えられない)というところ。
それを、本書は、同じ家系図を形を変えて随所に挟みこむことで、いちいちどこかのページにある家系図を参照しなくても、すらすらと読み進めることができる。
文章も平易で、わかりにくい部分はない。
一方、著者の主張する「天皇を私物化する摂関家」というものが、十分な説得力を持って描かれているとは言えないのは残念。
藤原一族が「奸臣」というステレオタイプでくくられてしまっている。
とはいえ、華やかな王朝文化の裏で(というか表で)繰り広げられた権力闘争を、わかりやすく解説した、興味深い1冊である。
面白いです。面白いんですが・・・

んー…。
内容以前に、第一に思ったこと。
序文の文章が、ちょっと、悪文の見本みたいなひどさ。
はっきり言って、かなり下手です。

例えば[見捨てられた一条天皇]はツッコミどころが満載です。
一番すさまじいものを挙げると、
同じ事(40人の殿上人が給仕を怠り資平一人が出仕したこと)を、
後半1ページ内で3度も、しかも下のような流れで書いています…、
1・この日40人が出仕しなかったから、資平が出仕した。
2・この日資平が出仕したのは、40人が出仕しなかったからだ。
3・この日資平以外は出仕しなかったようだ。
……
次の[左大臣の権勢]の項にしても、妙に、素人の書く、青臭い小説的な表現・文章運びで、
思わず眉をひそめてしまいました。
第一章以下、段々、青臭い、すさまじい感じは、
(こちらの慣れもあり)抜けていくのですが、
やっぱり文章は終始どこか三流四流小説じみている…。
天皇たちを「孤独さ」と言う人間的な観点から見つめようというタイトルですから、
ある程度小説じみるのは覚悟はしていたんですが、
学者さんはあくまで学者さんらしく書いてほしいです。
しかも下手な上に、大袈裟な言葉、派手な表現、気取った言いまわしを好んで使っているから、
付き合わされる方はたまったものではありません。。。

また、他のレビュアーの方々の書いておられる通りのことを、私も強く感じました。
筆者の見解、人物に対する決め込みに強引なところもあれば、
考証(ないし読者への考証の提示)に物足りなさがあります。
どうも、安心して読み進めていいのか、
王朝時代にはあまり詳しくない、勉強中の私にはわからなくて戸惑うこともありました。

さんざん言ってしまいましたが、内容的な面白さはあります。
信用できる研究材料とか、文章を味わえる作品とかでなく、
あくまで、ただ書かれている内容が、です。
なのでもう一度読みたいとは思えませんが、
不思議と買って損したとは思っていません。
だから☆2つにしました。
もしも小説なら「キャラクターの心理描写が不自然」

私は枕草子のファンであるせいもあり、藤原定子贔屓の人間です。その為、中の関白家への一切の同情を省いたような筆致は正直痛かったです。だけど、敵対する御堂関白家贔屓の視点で書いてあるわけでは全くなかった為、かなり冷静に読む事が出来たし、今まで同情一方だった中の関白家の没落をも、「無理もない事」として納得する事が出来ました。ただ、兼家と道長に対する辛辣さは、少しばかり容赦がなさすぎるように思えました。彼らについては、政治問題以外では人間的なエピソードがそれなりに残っているにも関わらず、それらについてのエピソードは全く紹介せず、一方的に奸臣呼ばわりは、些か公平さを欠いていたように思う。著者は本文内で「慈円は、『愚管抄』にて意図的に三条天皇を貶めている」と批判していましたが、著者こそ……と、正直思いました。
この本は文章的にも大変読みやすくてすぐに読了する事が出来た点は評価しますが、現代にまで残っている状況証拠や一部の証言だけで、昔の人々の深層心理を「?であろう」的に想像で断定している箇所が多かったのは、ちょっと頂けませんでした。納得のいく「であろう」、理解の出来る「であろう」ならば全く構わないのですが、正直「幾通りか考えられる可能性の中でどうしてそれを選ぶのか」と首を傾げるようなものがいくつかありましたので。もしも小説なら「キャラクターの心理描写が不自然」といったところでしょうか。しかしかなりの数の王朝モノを読んできた身でありながら、「それは知らなかった」というエピソードを沢山拾えたのは確かであり、王朝モノ好きの人には特にお勧めしたくなる本である事は間違いないです。
もっと謹厳堅実な態度を

王朝の天皇をめぐる人間関係について、新鮮な説を提供しているが、穿った見方が少なくない。いろいろ大胆に問題を提起しながら、掘り下げが足りないのでは、結局著者の思い込みにすぎない。王朝の天皇ははたして傀儡だったのだろうか。摂関は概して横暴だったのだろうか。摂関政治の構造は、そんなに単純な図式だったのだろうか。肝心な問題を、細心な考証がないまま、通り一遍の説明だけで終わらせているのは、非常に残念なことである。

言葉遣いも不適切と見える所がある。たとえば、藤原兼家・道長父子を指して「奸臣」と呼んだ所。策略家であるに違いないが、あくまで王家の外戚としてその威光を笠に着た彼らを、こう位置づけするにはさすがに抵抗感がある。

もっと謹厳堅実な態度を著者に求めたく思う。

天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代

足の小指をタンスの角にぶつけたくらいの衝撃です。

前著『殴りあう貴族たち』(柏書房)も衝撃的でしたが、
あちらは「知らない世界を発見した衝撃」、
同じ藤原実資『小右記』に基づいても、
こちらは「何十年も気付かなかった誤りを正してもらった衝撃」です。

枕草子や大鏡を読んで理解していた平安朝の人間関係が、
180度ひっくりかえされます。

・円融帝が親しみを感じていたのは兼通、兼家のどちら?
・一条帝は伊周に親しんでたか疎んじていたか?

ほとんどの方が思い浮かべた解答は、まちがった方でしょう。
文学として平安朝に携わっているひとにも、
ぜひ、一読いただきたい書です。



角川学芸出版
殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語
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源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820) (朝日選書)
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天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)

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