天狗争乱 (新潮文庫)



天狗争乱 (新潮文庫)
天狗争乱 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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時勢の流れに乗り切れなかった天狗党の悲劇

 日米修好通商条約調印後に尊皇攘夷運動の盛んな水戸藩士の中でも特に過激な武田耕雲斎率いる水戸の天狗党が筑波山で挙兵してから越前で処刑されるまでの事件の流れを詳細に記録した傑作、本書に出会うまでは、なぜ京都の徳川慶喜に直訴するために戦いながら絶望的な行軍をする必要があったのか分からなかったが、本書を読んで西へ移動するしか生きる術がなかったことを知ることができた。徳川慶喜が幼少の頃から顔を合わせていたはずの水戸天狗党の面々を鰊蔵に押し込めて、1日に数百人(武田耕雲斎の3歳の孫や妻を含めて)斬首に処するという過酷な決断を下した件については心情を推し量ることができなかった。斉昭の忠実な家臣が斉昭の息子に殺されることになるとは歴史の皮肉である。ありままの事実を淡々と書き並べたような盛り上がりのなさやドラマ性のなさに物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、この淡々とした話の展開が、真実をもとにしたリアリティと臨場感を醸し出す効果を高めており、この作風は著者の大きな魅力だと思う。この作風は他の作品にも一貫しており、読後の充実感と爽快感を与えてくれる。まだ著書の作品を読んだことのない人は本作よりも「関東大震災」「長英逃亡」「破獄」「漂流」等の作品から入ることをお勧めします。
歴史は変わっていたか?

桜田門外の変の四年後に、実際に起きた出来事を描いた作品。
主人公といえる人物は登場せず、天狗党自体がそれである。
それ故にいまいち視点が定まらない感があった。

尊王攘夷思想を体現するために組織されたが、
世論を味方にできずに、あらゆる方面で敵を作る。
京都を目指し、現在でいう茨城、栃木、長野、岐阜、石川の各県をさまよい、
なんとも煮え切らない、中途半端な最後を迎える。凄絶であるが、地味すぎる争乱である。
しかし、吉村氏はまさに、それを書きたかったのか?

この時代背景を知らない方はよくわからないと思います。
不親切に(こういう所が好きなのだが)、その辺りの事は一切何も書いていないから。
同じく、吉村氏の作品「桜田門外の変」と続けて読んでいただければ、より楽しめると思います。



新潮社
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